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新薬学研究者技術者集団の紹介

 

 新薬学研究者技術者集団(略称:新薬学者集団)がめざすところは,国民の生命と健康を守る立場から薬学の正しいあり方を追求し,創造活動の発展をはかること,研究者技術者としての社会的責任を自覚し,保健,医療,福祉,環境などの分野で薬学の成果が正しく生かされるようつとめることなどです.

 新薬学者集団は,1965年,各地に広がった薬学生の自主ゼミサークル(グループシグマ: 1959年-,など)を源流として設立された全国組織です.

 私たちは,集団の発足当初から,医薬品の安全性と有効性を確保する課題に強い関心を向けてきました.集団的な調査学習活動をとおして「わが国における医薬品開発の現状批判」を一連の論文としてまとめるとともに,サリドマイド被害や薬害スモンでは,被害者救済と訴訟の支援に参加してきました.これらの薬害は,薬事行政や薬学のあり方を深刻に問うものであり,訴訟をとおして責任の所在を明確にすることが,薬をめぐる諸問題の改革につながると考えたためです.

 私たちは,それまでの日本の薬学が,基礎科学(とりわけ有機化学)に偏重し,医療・公衆衛生・創薬などの課題に無関心であり,その本来の使命を十分に果たしてこなかったことへの反省に立ち,あるべき薬学の姿について論議を重ねてきました.また,その成果を「薬学概論」(1973年),「社会薬学入門」(1987年)などの集団的著作として出版し,普及につとめてきました.集団の機関誌「新しい薬学をめざして」の名称は,このような取り組みの精神を表したものです.

 私たちは,設立当初から日本の薬学がアカデミズムに偏重し,医療・公衆衛生などの分野で働く技術者の仕事は程度の低いものとして軽視されてきた現実に目を向け,研究と技術の統一,底辺の技術者の自立と誇りの回復をめざして活動してきました.「職場に根ざした薬学の創造」を合い言葉に,試験研究機関,病院の検査部門・薬局,製薬企業などでの仕事の進め方を議論するとともに,相互援助の精神で技術者としての力量の向上をはかることも重視してきました.

 新薬学者集団の発足から50年近くを経たいま,日本の薬学を取り巻く状況は大きな変化を見せています.

 医療においては,「患者本位の医療」「根拠に基づく医療」「保健・医療・福祉の協働」など新しい理念に基づく医療改革への取り組み,国民のための医薬分業の定着をめざすうごきが見られます.他方,医療費の国庫負担削減を主眼とする医療制度「改革」は,国民を公的医療から遠ざけ,医療の現場には医療の質の低下につながる新たな困難を生みだしています.また,薬害エイズ,薬害ヤコブ病,薬害肝炎,イレッサ薬害などの続発に見られるように,薬害を生む行政と医療の構造的なしくみは依然として残されたままです.

 薬学の分野では,医薬分業の進展のなかで,薬剤師の臨床知識向上のために薬学教育6年制がはじまり,「臨床系薬学」が強化されました.また,「社会薬学」など新しい教育・研究領域を導入して,薬学に対する現実的な要請に応えようとするうごきも強まってきました.これは,新薬学者集団が「薬学概論」などで早くから主張してきた方向に沿うものであり,私たちの活動の先見性を裏づけるものでもあります.

 このような新しい状況の進展のなかで,私たち薬学研究者技術者に求められている役割を問い直し,国民の期待に応えられる薬学を教育・研究・仕事の場に根付かせていく取り組みがいっそう重要になっています.

 新薬学者集団はこのような考え方に立って,以下に紹介するような多面的な活動を行っています.あなたも新薬学者集団に加入し,これらの活動に参加していただくよう心から呼びかけます.

 会員の所属は,大学(学生,大学院生,教員),試験・研究機関,行政機関,病院薬局・臨床検査室,保険調剤薬局,製薬企業など広い範囲にわたっています.会員は所属,年齢,キャリアーの違いにかかわらず対等平等の関係で活動に参加しています. 

 「有効で安全な薬物治療の実現」「薬害の根絶」「社会のニーズに応える薬剤師職能」「化学物質の安全性」などにかかわる課題が集団的な議論と取り組みの主な対象となっています.最近では,「イレッサ薬害の真摯な検証のために」(アピール),「医薬分業国際標準化(完全分業)実施についての要望書」,「一般用医薬品の対面販売維持を求める意見書」などを発表しています.

 会員の専門的関心や社会的関心に応えるため定期的に公開シンポジウムを開催しています.新薬学者集団のシンポジウムの特徴は,完成された研究の成果を持ち寄るだけでなく,積極的に研究テーマを掘り起こし,報告を準備するなかでの相互援助をとおして,会員の力量が高まるよう配慮していることです.

 

<最近のシンポジウム・研修会から>

・合理的な薬物治療をめざして─向精神病薬(2000年6月・京都)
・最新の院内感染対策─薬剤師の果たす役割(2001年2月・大阪)
・合理的な薬物治療をめざして─降圧剤(2001年6月・大阪)
・サプリメント─現状と問題点を探る(2002年2月・京都)
・ジェネリック医薬品を考える(2002年6月・神戸)
・厳しい医療情勢の中で求められる薬剤師の役割
  ─これからの薬剤師業務を展望する(2003年2月・京都)
・いま問われる医薬品の社会的管理─イレッサ、サリドマイド、中国製やせ薬から見えてくるもの
 (2003年6月・大阪)
・サプリメントブームへの警鐘 (2005年6月・京都)
・精神科領域における薬物療法の検証―薬剤師に期待されるもの(2006年2月・京都)
・高齢者における薬物療法(2006年6月・京都)
・高齢者薬物療法の適正化と薬剤師職能(2007年2月・大阪)
・どうするタミフルー必要性と安全性の検証(2008年3月)
・これは知っておきたい! -医薬品論文の批判的吟味の実際と役立つ疫学・統計学知識(2008年6月)
・インターネットによる医学・薬学情報の検索入門―実技講習会(2008年11月および2009年8月・京都)
・新しい時代に求められる薬剤師の役割(2009年7月)
・「健康食品」にどう向き合うかー薬剤師の立場から(2011年6月)

 

 

機関誌の発行

新薬学者集団の理論誌と交流誌を兼ねた「新しい薬学をめざして」を定期発行(年間10回)しています.

メーリングリストの開設

メーリングリスト「シグマネット」では,医療・医薬品,食品,環境など,会員にとって関心の深い分野についての最新情報のやりとりや意見交換を行うほか,集団運営上の連絡も行っています.「シグマネット」は,地理的に分散した会員をリアルタイムで結びつける有力な手段となっています.

薬学夏の学校

薬学分野の学生や新社会人が専門家としての使命感と生きがいをともに考える場とするために「薬学夏の学校」を開催しています.
 <「薬学夏の学校」のプログラムから >
・インタビュー企画「若手薬剤師の本音」(2001年・東日本会場)
・講演「日本の薬物治療の問題点と解決に向けて」(2001年・西日本会場)
・講義「ともに考えてみましょう,生活,医療,介護,くすりのこと
─薬学生・薬剤師への期待」(2001年・西日本会場)
・ハンセン病施設恵楓園の見学(2001年・九州会場)
・講演「今日の環境問題を考える」(2002年・九州会場)
・グループ討論「規制緩和と薬剤師ーコンビニで薬を買えるのはなぜ問題か」(2003年東日本会場)
・講演「薬害はなぜ繰り返されるのか」(2003年九州会場)
・講演「高齢者リハビリお絵かきの取り組みから治療の個別性を考える」(2005年関西会場)
・講演「先達を信じず、教科書を疑い自分の頭で考えよう!!」
「かかりつけ患者さんが健康食品を食べていたら」(2006年東日本会場)

 

 

薬と社会をつなぐキーワード事典

2011年3月,新薬学者集団が中心となって組織した編集委員会が「薬と社会をつなぐキーワード事典」(本の泉社)を出版しました.

平和憲法を守る活動

「9条の会」のアピールに賛同し,改憲反対に取り組んでいます.

他団体との共同

薬害オンブズパースン会議,全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連),NPO医薬ビジランスセンター,国民医療研究所,医薬品・治療研究会(TIP誌),消費者運動団体など関係諸団体と連携し,広範な人々との結びつきを強めるよう努めています.

 

新薬学研究者技術者集団(略称:新薬学者集団/別称:シグマ)
〒555-0024 大阪市西淀川区野里3丁目6-8
一般社団法人大阪ファルマプラン 本部気付
TEL:06-6477-8088(担当:廣田)  FAX:06-6477-8090

E-mail:sigma-info@faruma.co.jp