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厚生労働大臣に「医薬分業国際標準化(完全分業)実施についての要望書」を提出しました。

 社団法人日本薬剤学会(杉林堅次会長)は、2011年5月24日、国際標準医薬分業推進に関する陳情書を細川律夫厚生労働大臣に手渡されました。

 私たち新薬学研究者技術者集団もこの日本薬剤学会の陳情書の趣旨に賛同し、私たちとしての観点も加味して、同様の要望書を2011年7月25日厚生労働大臣に提出しました。


 

医薬分業国際標準化(完全分業)実施についての要望書

2011年7月25日

新薬学研究者技術者集団

厚生労働大臣 細川律夫殿

要望内容

 国民の安全と健康のために、薬剤師法、医師法及び歯科医師法の調剤に関する例外規定を削除して、医薬分業国際標準化(完全分業)の実施を要望します。

 

要望理由

 わが国においては、1989年(明治22年)公布の薬律付則により医師の調剤が認められました。以来122年にわたり、薬剤師法、医師法および歯科医師法の例外規定により、薬剤師でなくとも調剤できるという先進国に例をみない形態が続いています。

 社団法人日本薬剤学会(杉林堅次会長)は、2011年4月11日厚生労働大臣あてに医薬分業国際標準化に関する陳情書を提出されました。

 日本薬剤学会は、わが国の新しい薬学教育制度において薬剤師養成課程が6年制に移行し、2012年には新制度による最初の薬剤師が世に送り出されるという画期的な機会に、不正常な状態を改め、例外規定を削除することで本来の完全分業を実現するよう陳情されています。

 同学会は医薬分業国際標準化(完全分業)の意義について、薬学の進歩発展は著しく、非薬剤師の調剤では患者の安全確保は不可能なことを第一にあげています。また、調剤行為の範囲が「医師の処方せんのレビュー」と「薬剤調製・交付」の両方から成るという認識が強まっているが、例外規定による医師の調剤には、このような監査機能が働かず、患者の安全が保障されないことをあげています。そのうえで、確実に処方せんを発行し、薬剤師の監査を経る完全分業制度が不可欠であると記しています。

 私たちは、この日本薬剤学会の陳情書に賛同し、同様の要望を行うものです。

 医師法第22条(処方せんの交付義務)は、「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当たっている者に対して処方せんを交付しなければならない」と定めています。ところがそれに続けて、処方せんを交付しなくともよい例外規定として、「患者または現にその看護に当たっている者が処方せんの交付を必要としない旨を申し出た場合」のほか、「処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合」、「診断又は治療方法の決定をしていない場合」などをあげています。薬剤師法第19条(調剤)は、「薬剤師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない」と定めています。ところがこれに続けて、医師が上に掲げた場合において、「自己の処方せんにより自ら調剤するときは、この限りでない」としています。

 例外規定によるとしながら、現実には医師自身が調剤することはなく、無資格者が調剤しており、「医師が自ら調剤するときはこの限りでない」も死文化しています。

 このような例外規定があるために、本則が骨抜きになっているのは法治国家のあり方としても異常であり、その意味でも例外規定は削除されねばなりません。

 患者の安全確保と適切な薬物療法のためには、薬剤師が医師と「対等な関係」で監査することが不可欠です。しかしわが国では医師や医療機関が院外処方せんを発行するかどうかは、医師や医療機関の判断にまかされており、医師や医療機関はいつでも院外処方せんの発行を中止できます。医師・医療機関と薬剤師・薬局とは対等の関係になっていません。このような状態では、薬剤師が患者のために、本来の監査機能を発揮することができません。

 日本が近代化の過程で、医薬分業を確立しなかったことは、日本の薬学の歩みをゆがめ、薬学の実学としての発展と薬剤師の社会的立場にひずみをもたらしました。近年ようやく改善の方向に向かい、薬剤師が社会の要請に応えられるよう、薬学教育が6年制となりました。2012年にはじめて6年制薬学教育を終えた薬剤師が誕生します。このことは、薬剤師、薬学、そして社会にとっても画期的な意義を持ちます。

 いまこそ、医師・薬剤師が対等の立場で、患者・国民の安全と健康のために協力しあえるよう、例外規定の削除による医薬分業国際標準化(完全分業)の実施を要望します。

以上