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 「疑義照会」は、医薬品の適正使用にかかせない業務であり、処方医との円滑なコミュニケーション・協働が重要です。
 薬剤師法と療担規則には「疑義照会」が明記されていますが、医師法にはなく、このことが医学部教育で「疑義照会」について教えられないことにつながり、円滑な「疑義照会」を困難にしている側面があります。
 新薬学者集団は、円滑な「疑義照会」のための環境整備のために、 厚生労働大臣に「医師法に『疑義照会』について明記を求める要望書」を提出しました。


厚生労働大臣 

  小宮山 洋子 様 

医師法に「疑義照会」について明記を求める要望書

2012年7月24日    
新薬学研究者技術者集団
代表 早川 浩司

要望事項
 医師法に、「医師は、その公布した処方せんに関し、薬剤師から疑義の照会があった場合には、これに適切に対応しなければならない」と明記するよう要望します。


要望理由

 薬剤師が医師の発行した処方せんを主に薬学的観点から吟味し、疑義があれば照会する「疑義照会」は、医薬品の適正使用において欠かせない業務です。そこでは処方医との円滑な相互コミュニケーション、協働が非常に重要です。
 薬剤師法第24条(処方せん中の疑義)は、「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない 」と薬剤師の責務を規定しています。ところが医師法などには、これに対応する「疑義照会」についての記載が全然ありません。
 「疑義照会」についての記載は、健康保険法に関連する省令である「療担規則」と呼ばれる「保険医療機関及び保険医療養担当規則」第23条(処方せんの交付)に、「保険医は、処方せんを交付する場合には、様式第二号又はこれに準ずる様式の処方せんに必要な事項を記載しなければならない。 2. 保険医は、その交付した処方せんに関し、保険薬剤師から疑義の照会があつた場合には、これに適切に対応しなければならない」とあるのみです。
 医師法・薬剤師法は、医師・薬剤師にとってその法的な行為義務などを定める、最も基本的な法律です。そして医科大学・薬科大学では、医師法・薬剤師法などの基本的な事項は教科書で教え、また医師国家試験・薬剤師国家試験で出題するなど医師・薬剤師として医療を担う人たちへの周知が期されます。医師法に記載のない「疑義照会」は医学生に教えられず、このことが卒業して医師となり薬剤師から「疑義照会」の問い合わせがあった際に、スムーズに対応されないことにつながっています。
 「疑義照会」は、患者の安全と医薬品の適正使用のために医師と薬剤師が協働する重要性があり、そのよりよいコミュニケーションの充実のために、制度的な環境整備をはかる必要があります。
 医師法に、保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)には書かれているように、「医師は、その公布した処方せんに関し、薬剤師から疑義の照会があった場合には、これに適切に対応しなければならない」と明記されるよう要望します。

以上