HOME > 提言・アピール・記事 > 薬学教育  

分野別 提言・アピール・記事

 

「『薬学教育の改善・充実について(答申)』を受けた
大学設置基準等の改正等について」の意見

このたび文部科学省では,中央教育審議会大学分科会より示された「『薬学教育の改善・充実について(答申)』を受けた大学設置基準等の改正等について」(答申案および提言案)[注]に関するパブリックコメント(意見提出手続)を実施しました。
 新薬学者集団ではこれに応じて,2004年9月8日付で下記のような2件の意見を提出しました。


「『薬学教育の改善・充実について(答申)』を受けた
大学設置基準等の改正等について」の意見

新薬学研究者技術者集団

その1

 大学設置基準改正要綱(案)の第一、「専任教員数に関する事項」では、「6年制薬学部・学科については、…専任教員数を現行の2倍の水準とする」としています。

 この基準(案)に従うと、例えば収容定員600人(現在の国公立大学薬学部の大部分はこれ以下の定員になると思われます)の6年制学部(1~2学 科構成)における専任教員数は30人前後にしかなりません。同じ規模の医学部および歯学部の専任教員数の基準が、(附属病院の教員数を含むとはいえ)それ ぞれ140人および92人であることを踏まえるならば、この水準は極めて低いといわざるを得ません。現在の国公立大学薬学部には既にこれを上回る専任教員 を配置しているところが大部分であり、この基準(案)では6年制への移行に伴う専任教員の充実が極めて困難になると予想されます。

 今回の薬学教育課程の年限延長が、「近年の医療技術の高度化、医薬分業の進展等に伴う医薬品の安全使用や薬害の防止といった社会的要請に応えるた めに」「教養教育や医療薬学を中心にした専門教育及び実務実習の充実を図る」(中教審答申)ことを目的としたものであることを考えるならば、医療薬学分野 の教員の充実が必須であります。

 設置基準が最低基準を示すものであるとはいえ、6年制課程における教育を格段に充実させるに足る専任教員数の水準を定めることが必要であると考えます。

その2

 大学設置基準改正要綱(案)の第一「専任教員数に関する事項」では、「当該専任教員の一定割合は薬剤師としての実務の経験を有することを要件とすることとし、当該割合(1/6以上)を告示で定めることとする」としています。

 これは、6年制薬学教育において臨床薬学教育の充実を図るための具体的な裏づけとしての規定かとも思われますが、この規定を大学設置基準に取り入れることは、以下にあげる理由から適当でないと考えます。
昨年、専門職大学院設置基準で実務家教員を置く事を定めた理由として、貴省はパブリックコメントへの回答で、「専門職大学院で行われる教育の目的は、既存 の修士課程・博士課程とは異なり、ある特定分野の職業人を養成することであることから、理論教育と実務教育の双方の観点からの教育活動が行われることが必 要不可欠であること、このためその職業分野の実務経験を有する者が理論教育の範疇に収まらない実務の観点からの教育を行うことが重要となり、この意味にお いて実務家教員の参画が不可欠と考える」と説明されています。

 しかし、6年制薬学教育は学部教育であり、専門職大学院教育ではありません。また薬学教育の目的について、6年制は薬剤師養成、4年制は創薬研究 者などの養成との位置づけがされているようですが、これは6年制と4年制の併存が決まったことに伴い、その性格面での相違を明確化する必要に迫られたもと での安易な位置づけといわざるを得ません。国際基準や米国での経験などからも、日本の薬学教育が、将来6年制に統一される可能性もあり、現在の時点で、大 学設置基準という基本的な文書において、6年制の教育の目的を「特定分野の職業人養成」と位置づけてしまうことは適当でないと考えます。

注:http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2004/04082401/001.htm