HOME > 提言・アピール・記事 > 一般用医薬品販売制度  

分野別 提言・アピール・記事

コンビニなどでの医薬品販売に反対する

2003年11月19日

新薬学研究者技術者集団

 医薬品販売の規制緩和に関し,「今年中に検討を行い,安全上特に問題がないとの結論に至った医薬品すべてを薬局・薬店に限らず販売できるよう にする」との閣議決定を受けて,厚労省の「医薬品のうち安全上特に問題がないものの選定に関する検討会」では,11月中に選定を終えるという強行作業が進 行中である。

 「医薬品」は,本来,必要な限り十分な供給が求められる一方,常に必要最小限の使用にとどめるよう留意すべき特殊な性格の商品であり,とりわ け安全性対策から社会的規制が強く求められている。もし今回の閣議決定が,「医薬品」をコンビニなどで販売していたずらに消費を拡大させ,それによって日 本経済を活性化しようなどという意図に基づくものであるとすれば,それは医薬品の本質にもとる言語道断な試みであると言わなければならない。

 これまで,アンプルかぜ薬,サリドマイド,キノホルム(薬害スモン)など一般用医薬品によるものを含め,さまざまな薬害が多発するなかで,その都 度 医薬品規制の不十分さが指摘されてきた。このように,これまでの薬事行政の歴史は医薬品の安全性対策の歴史でもあり,この期に至って「医薬品」のコンビニ などでの販売を自由化することは,明らかにこれに逆行している。いつでも,どこでも,誰でも販売できるといった安直な医薬品の提供を許容することは,不適 正な薬剤使用につながるとともに,場合によっては必要な医療機関受診の機会をも失わせることになる。このような,医薬品の安易な「規制改革」に反対する都 道府県議会の意見書提出は,日本薬剤師会の調べで37都道府県(2003年10月14日現在)にも達している。一般用医薬品販売を自由化した米国でも,そ の後の副作用問題で,自由化の実施が安全性対策上の悔いとなっていることが伝えられている。

 また,「医薬品のうち安全上特に問題がないもの」が存在するという考え方は,それ自身科学的論理性に反している。「安全上特に問題がない医薬品」が認められることは,日本の医学・薬学,医療,薬事行政の歴史の上で取り返しのつかない汚点となるであろう。

 ここにわれわれは,国民の健康・生命に深いかかわりをもつ「医薬品」のあり方に鑑み,次のように,意見を表明し,提言するものである。

  1. 医薬品はその性格から無資格業で扱うべきでない。医薬品をコンビニなどで販売することに強く反対する。
  2. 外箱での情報提供などを充実することで,コンビニなどでの販売を行って差し支えがないと考えられる一部の品目は,「医薬部外品」制度の活用などで販売すべきである。一品といえども,「医薬品」のままコンビニなどで販売することには,強く反対する。
  3. 一部の量販店などで行われている医薬品販売方式を改めさせ,「薬剤師による医薬品の対面販売」を徹底させる法的措置を講じるべきである。
  4. カタログ販売,特例販売業,配置販売業などでの「薬剤師による医薬品の対面販売」と整合性のとれていない現実については,安全性確保の観点 から見直して規制を強化すべきである。あわせて,外箱での情報提供などの充実を考慮した上で,安全性の観点からの医薬品と医薬部外品の分類の厳密化,日本 薬局方品目の見直し(局方品は薬事法第2条で無条件に医薬品となることとの関係)などを通じ,「医薬品」該当品の厳格化を行うべきである。 

                          以 上