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内閣総理大臣などにイレッサ訴訟判決に控訴しないことを求める要請書を提出しました。

 東京地裁は2011年3月23日、先の大阪地裁の判決に続いて、患者の安全確保のために医師などに必要な情報を提供する添付文書の記載に不 備があったことを指摘しました。東京地裁の判決は、アストラゼネカ社だけでなく、同社に必要な行政指導をしなかった国に対しても責任を認めました。

内閣総理大臣 菅 直人 殿
厚生労働大臣 細川 律夫 殿
アストラゼネカ株式会社 代表取締役 加藤 益弘 殿

2011年3月29日
新薬学研究者技術者集団

イレッサ訴訟判決への控訴を行わないよう要請します

 2011年3月23日、東京地方裁判所でイレッサ訴訟に関する判決が言い渡されました。判決は、先の大阪地方裁判所判決に続いて、患者の安全確保のために医師などに必要な情報を提供する添付文書の記載に不備があったことを指摘しました。

 東京地方裁判所の判決は、添付文書に安全性を確保するために必要な記載をしなかったアストラゼネカ社の製造物責任法による責任を認めただけでなく、アストラゼネカ社に必要な行政指導をしなかった国に対しても国家賠償法に基づく責任を認めました。

 判決は、「厚生労働大臣は、医薬品の輸入を承認するに当たり、原則として、その添付文書に当該医薬品の副作用等 その安全性を確保するために必要な使用上の注意事項の記載がされているか否かを審査すべきであり、安全性確保のために必要な記載が欠けていれば、これを記 載するよう行政指導をする権限を行使すべき責務がある」と記しています。さらに「もとより添付文書に安全性確保のための必要な記載をする責務は第一次的に は当該医薬品の製造業者又は輸入販売業者にあるが、営利企業であるこれら業者が安全性確保のために営業上不利益となる情報を進んで記載することは十全には 期待し難いことであるから、この面における厚生労働大臣の指導は医薬品の安全性確保のために不可欠のものというべきであって、医薬品の安全性確保のために 必要な記載が欠けているのにこれを放置したり、一応の指導をしたのみで安全性確保を貫徹しないままにすることは、医薬品による国民の健康侵害を防止する観 点からは許されないことというべきである」と明確に指摘しています。

 大阪・東京両地方裁判所の判決によって、患者の安全確保にとって非常に重要な添付文書による情報提供にかかわる製造販売業者と国の責任はすでに明確です。裁判を長引かせ、被害にあわれた患者・家族にこれ以上の苦痛を与えることは許されることではありません。