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分野別 提言・アピール・記事

2005年6月23日

厚生労働大臣 尾辻秀久 様

    新薬学研究者技術者集団 代表 野口衛

抗がん剤などの新薬の「市販後全例調査」義務付けについての要望書

 私たち新薬学研究者技術者集団は、国民の生命と健康を守る立場から薬学の正しいあり方を追求し、保健、医療、福祉、環境、研究などの分野で薬学の成果が正しく生かされるよう活動しています。

 私たちは、集団の発足当初から,医薬品の安全性と有効性を確保する課題に強い関心を向けてきましたが、最近の肺がん治療剤イレッサ(ゲフィ チニブ)や抗リウマチ剤アラバ(レフルノミド)などの教訓から、以下のように重点的な薬剤について承認条件として「市販後全例調査」の実施とその結果の定 期的で迅速な報告を製薬企業に義務付けることが、医薬品安全性監視での施策として非常に重要と考え、要望致します。

 「市販後全例調査」は、市販直後から投与する全例を登録し、使用成績の迅速な把握をはかるもので、分母(使用者数)を明確にした有害副作用 の把握と、それに対する迅速な対処を可能にします。また、販売企業の市販後全例調査に対する対処を通じて、専門家による慎重な使用をも確保します。これら は厚生労働省が重視されている新薬の「市販直後調査」の主旨を重点的な薬剤について徹底させるものです。

 なお、「市販後全例調査」期間中かどうかにかかわらず、企業が未知で重篤な有害副作用を知ったときは15日以内に厚生労働省に報告する義務 があるという薬事法施行規則253条の規定は当然の前提となっており、ここに記した定期的報告を待たず実行されるべきはいうまでもありません。

 併せて、最近欧米先進国で承認された未承認薬の承認を早める動きが顕著になっていますが、これらの医薬品についても、日本人における安全性の確保の観点から、「市販後全例調査」を行い、慎重に販売することが必要と考えますので、併せて要望致します。

1. 次の新医薬品に、3000症例以上の「市販後全例調査」の実施と集積された成績の定期的報告を承認条件として義務付けてください。

 1) 抗がん剤
2) 生物学的製剤
3) 免疫抑制剤
4) 新たな作用機序を有する医薬品
5) 海外で有害副作用が問題となっている医薬品

2. 英米仏独で承認されているということで、日本人でのデータを軽減して承認された医薬品に、800例以上の「市販後全例調査」の実施と集積された成績の定期的報告を承認条件として義務付けてください。  

以上