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分野別 提言・アピール・記事

2005年4月1日

厚生労働省医薬食品局審査管理課 御中

「抗悪性腫瘍薬臨床評価方法に関するガイドライン(改訂案)について」意見を提出いたします。

新薬学研究者技術者集団

意見

承認に延命効果についての第III相臨床試験の成績を求め、国際的な整合性を図る、今回のガイドライン改訂の主旨は時宜をえたものと考えます。

しかし、その主旨が徹底されていない箇所や誤りの箇所も目につきますので、改善を要望する立場から、意見を提出致します。

1.  III.概要 3)承認申請時の第III相試験成績の提出

 「非小細胞肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんなど罹患率の高いがん腫では、延命効果を中心に評価する第Ⅲ相試験の成績を承認申請時に提出すること を必須とする」と「必須」としながら、「ただし」以下にこれを否定する不明瞭な記載をしていることは、改訂の主旨を損なうもので、重大な欠陥です。

 「ただし、第II相試験終了時において高い臨床的有用性」以下、4行下の「国内外を問わない。」までは削除し、次の「また、海外に信頼できる第 III相試験成績が存在する抗悪性腫瘍薬は、」を「ただし、海外に延命効果が示された信頼できる第III相試験成績が存在する抗悪性腫瘍薬は、」とするこ とで続ける代案を提示します。

2.  VI. 第III相試験 1. 目的

最初の記載で、「第III相試験は、より優れた標準的治療法を確立するために行われる臨床試験」であるとしていますが、一般に第III相試験の性格をこのように位置づけるのは不適当です。

第III相試験は、その候補化学物質が医薬品として有用かどうかを確認するうえで欠かせない試験です。

少し下の行に「新規抗悪性腫瘍薬の臨床的有用性を明確に検証する試験」との記載があります。この記述に換えるなど、第III相試験の基本的性格が明瞭になるようすべきです。

また、最後の段落の下から2行目「ただし、第II相試験終了時において」以下次ページ3行目の「検証しなければならない」までは、上記1.で削除するよう述べたと同様に、削除すべきです。

3. VI. 第III相試験 3.対象患者

第III相試験の対象患者ですが、「原則として初回治療例とする」は不適当で、削除すべきです。

標準的な治療法のある疾患では、患者にはまずその標準的な治療法を優先すべきです。第III相試験で初回治療例が対象となるのは、標準的な治療法の ない場合や、第2次ライン使用での有用性が確認された薬剤がさらに初回治療例に使用される第1次選択薬としても有用か確認する場合など、第III相試験全 体の一部にしか過ぎず、これは全く誤りです。

4. VI. 第III相試験 4.対象疾患の選定と試験計画    5.統計解析

試験計画で「対象癌腫について予後因子により前層別するなど、群間の比較性を保つため、適当な方法で無作為割付けを行う」とされ、統計解析で「影響 を及ぼすと思われる予後因子は、無作為化の段階で調整されるべきである」とされた点は、非常に重要なことなので、この記述が堅持されることを要望します。

5. このガイドラインでは、「有害事象の評価規準」について、「有害事象のうち、治験薬との因果関係がある、あるいは否定できないものを副作用とする」としています(IV-4-b項;V-9項;VI-7項)。

この記述を「有害事象のうち、治験薬との因果関係がある、あるいは因果関係を明確に否定できないものを副作用とする」と改めるよう提案します。

有害副作用については、個々の試験担当者が関係ないとするのでなく、全体像をみての注意深い検討が安全性対策の上で欠かせません。そうした意味合いで、この慎重さを強調するため、「明確に」を加える必要があると考えます。

以上