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妊娠中に投与される女性ホルモン剤のリスクと必要性
○近藤和子1,寺岡章雄2
(1京都市児童福祉セ,2大阪ファルマプラン) 

 

1.まとめ
2.妊娠中に使用された女性ホルモン剤の影響
3.女性ホルモン剤の開発と使用の歴史
4.日本で使用可能な女性ホルモン剤;産科領域
5.黄体ホルモン製剤
6.ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン(HCG)製剤
7.卵胞ホルモン(エストロゲン)製剤
8.プラステロン硫酸ナトリウム

 

ま と め

1. 世界的には、妊娠中における(さらには授乳中も)女性ホルモン剤の投与は禁忌となっている。

2. しかし、わが国では今なお女性ホルモン剤が妊婦に投与されている。

   黄体ホルモン剤          流早産防止
   胎盤性腺刺激ホルモン(HCG)剤  流産防止
   エストリオール製剤        子宮頚管熟化
   プラステロン硫酸ナトリウム製剤  子宮頚管熟化

なかでも、プラステロン硫酸ナトリウム製剤 (マイリス注・膣坐剤)は、わが国の初産婦の3分の1に使用されている(年間20万人、25億円余の医療費を消費)。

3. 最近では、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)の問題がクローズアップされ、女性ホルモン様作用を示す化学物質の内分泌かく乱作用による、胎児の生殖系、免疫系、脳神経系への影響が危惧されている。医薬品として使用される女性ホルモン剤は、これらの化学物質と比べても、はるかに強い内分泌かく乱作用を有している。

4. 妊婦に使用された女性ホルモン剤は、まだ強力なホルモンに対する防御機構が整っていない胎児に対し、急性的および長期的の両面で重篤な健康障害をもたらす可能性がある。

5. さらに重大なことは、これら女性ホルモン剤のいずれも、それらを妊婦に使用する医学的必要性(医学的介入の必要性)がもともとなかったり(子宮頚管熟化剤)、臨床試験でその有効性が明確に証明されていない(流早産防止に対する黄体ホルモン剤とHCG剤)ことである。

6. これらは妊婦について日本独自の適応をもち、必要性や有効性が明確でなく、危険性のみが存在する、「医薬品」以前の物質と言わざるをえない。医薬品が使用される患者・国民の立場にたって、厳しい見直しが必要と考える。 

 

妊娠中に使用された女性ホルモン剤の影響


DES (diethylstylbestrol)の構造式   女性ホルモン(エストロゲン)の構造式

   

1941〜1971年;米国で流産防止剤として使用、ヨーロッパでは少し遅れて使用、日本でも使用。

思春期以降に現れる遅発性の副作用により、多大な被害が発生して、現在も調査中。

・報告されている異常  
  女 児 ;膣の明細胞ガン、膣上皮の変化、生殖器の奇形、早産、子宮外妊娠、自己免疫性疾患、不妊
  男 児 ;生殖器の奇形、睾丸ガン、停留精巣、尿道下裂、不妊、前立腺ガン
   母  ;乳ガン
  第3世代;DESを服用した母親の孫に明細胞ガンマウスの実験では、孫の世代で生殖器の悪性腫瘍   
       祖母の世代の被曝の程度に依存

胎児期におけるエストロゲンの暴露 → 生殖腺に不可逆的な変化を生じる


DESの被害からの教訓

の添付文書
5.妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊婦または妊娠している可能性がある婦人には投与しないこと。
[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。卵胞ホルモン剤であるジエチルスチルベストロールを妊娠動物あるいは妊婦に投与したとき、出生児に生殖期系臓器の異常が報告されている。エストラジオールのヒトにおける催奇形性の報告はないが、妊娠動物への投与によって児の生殖期系臓器に異常が起こることが報告されている。ヒトにおいて、妊娠中の女性ホルモン剤(経口避妊薬等)投与によって児の先天性異常(先天性心臓奇形および四肢欠損症)のリスク増加の報告がある。]


1964年;高杉暹、ハワード・バーン
出産直後のマウスにエストロゲンを投与した実験により、危険性を証明     
雌  ;膣上皮の過剰増殖病変から腫瘍化(膣ガン)    
雄  ;精巣の萎縮、精子形成の持続的停止

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女性ホルモン剤の開発と使用の歴史  

1929  エストロゲン単離 (Butenadt)
1934  プロゲステロン単離(Corner, Allen)
1938  Diethylstilbestrol(DES)合成(Dodds)
1940  HCG(胎盤性性腺刺激ホルモン)胎盤から単離(Gurin)
1941  FDAがDESを認可
1950年代には流産防止剤などとして多用、
     500万人以上に使用。日本;オイベスチン(武田)発売。
1940年代;ヨーロッパ各国でも使用      
1964  高杉暹、ハワード・バーンによる警告
1970  若年女性に膣の明細胞ガン発生 
1971  FDA、妊婦への使用禁止
1960〜70年代;黄体ホルモンの大量投与(日本)
1972  日本、DESを妊婦に禁止
1973  米国、黄体ホルモン流産防止に使用禁止
1978  米国、エストロゲン(天然、合成)妊婦への使用を禁止
1996  日本、エストロゲンの妊婦への使用を禁止
(例外)エストリオール:分娩時の子宮頚管軟化
    メストラノール:例外とした理由は不明
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日本で使用可能な女性ホルモン剤;産科領域

1. 妊娠時
  流早産治療剤;ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン(HCG)
         黄体ホルモン
  出産前後  ;子宮頸管熟化剤
         (プラステロン硫酸ナトリウム、エストリオール)

2. 非妊娠時   
  避妊用 ;経口避妊薬ピル(エストロゲン+黄体ホルモン)
       子宮内避妊装置(徐放剤:黄体ホルモン)
  不妊症の治療剤;排卵誘発剤
       下垂体性腺刺激ホルモン(HMG)
       妊馬血清性腺刺激ホルモン(PMSG)
       ヒト胎盤性性刺激ホルモン(HCG)
       クエン酸クロミフェン、シクロフェニール
  更年期症状の緩和、骨粗鬆症の予防;
       エストロゲン、黄体ホルモン
       ホルモン依存性疾患(月経困難症、子宮内膜症、乳ガン)
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黄体ホルモン製剤

構造式
天然(progesterone          合成(norethisterone (17α-ethynyl-19-nortestosterone))

  

製 品  プロゲステロン製剤プロゲステロン注射剤:
 プロゲホルモン(持田)、ルテウム(帝国臓器)
 プロゲストン(富士)
 カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン注射剤:
 プロゲデポー(持田)、プロゲストンデポー(富士)
 オオホルミンルテウムデポー(帝国臓器)
 プロルトン・デポー(日本シェーリング)
 合成黄体ホルモン(プロゲスチン)製剤
 酢酸メドロキシプロゲステロン錠:
 ヒスロン(協和発酵)、プロゲストン錠(富士)
 プロベラ(住友)、メドキロン錠(東和薬品)
 ジドロゲステロン錠:
 デュファストン(第一)

効 能 切迫流早産、習慣性流早産、他妊婦以外への効能あり

米国 1973年 FDA;切迫流産への適応禁止
           心臓奇形の危険性        
           有効性を明確に示す臨床試験がない

PDRの警告 * 有効性を示す十分な証拠がない
     * 子宮弛緩作用により、不良受精卵の自然流産を遅延さす  
     * 胎児の生殖器の異常を示唆する報告がある出生男児の尿道下裂のリスクが2倍になり、
       女児の外性器が男性化
       (PDR: Physicians desk reference)

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ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン(HCG)製剤

HCGの作用
黄体形成ホルモン(LH)および間質細胞刺激ホルモン(ICSH)作用をもち、黄体形成作用と黄体維持作用が強く、下垂体性卵胞刺激ホルモン(FSH)作用による、卵胞成熟作用は少ないとされている。

構造式 糖蛋白質、分子量約10万、
    合成品はなく、現在も妊婦尿又は胎盤から精製

製 品 HCGモチダ(持田)、ゴナトロピン(帝国臓器)、プべローゲン(三共)、
    ゲストロン(デンカ製薬)、HCGフジセイヤク(富士)、
    プロファシー(セローノ)、プレグニール(日本オルガノン)

効 能 流産防止;妊娠初期の切迫流産、
         妊娠初期に繰り返される習慣性流産
     他に妊婦以外への効能あり

国際的な評価:米国、ヨーロッパでは流産防止の適応症なし

 適応症として妊娠初期の切迫流産、習慣性流産の記載はない。
オルガノン社製品で、流産防止が入っているのは日本のみ。
(オルガノン社;オランダ本社にあるcore data sheetより)

日本では、妊娠初期の切迫流産、習慣性流産の適応症があり、添付文書にも記載されている。ただし,「この適応症の追加は、十分な裏付け文献があるわけではないが、一応マネジメントから許可された。販促に使用する場合には事前の許可を要する」との備考付き。(日本オルガノン社;core data sheet 1974年版より)

 

日本におけるHCGの発売と適応症 
 1950年 「現代医薬品の実際」には8社製品収載
      適応症;悪阻、子宮発育不全、更年期障害
 1961年 第7薬局方:切迫流早産の適応症なし
 1965年 HCGモチダ発売  切迫流早産の適応症あり?
 1974年 プレグニール(オルガノン社)日本で販売開始
 1975年 再評価;切迫流早産→切迫流産(早産は除外)

 

HCGの危険性
妊娠マウスの実験結果から、HCGの胎児生殖器官に対する危険性が警告されている。胎児に対してHCGはエストロゲン作用を示す。(高杉暹ほか:Exp. Clin. Endocrinol. 86, 273-283 (1985)、IRCS Med. Sci. 14, 187-188 (1986)より)

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卵胞ホルモン(エストロゲン)製剤

構造式
エストリオール

製 品 エストリール(持田)             
    デポー注(プロピオン酸エステル)         1 ml 中 10 mg
    ホーリン(帝臓)水性懸濁注            1 ml 中 10 mg
    デポー注(安息香酸・酢酸エステル)1 ml 中 5 mg

効 能 分娩時の子宮頚管軟化(水性懸濁注は妊婦専用剤、
    デポー注は妊婦以外の他効能あり)

用 法 水性懸濁注 1日5-20mg筋注
    デポー注  エストリールは1回10mg筋注
    ホーリンは1回5-10mgを1-2週毎に筋注

 

 1996年エストリオールの錠剤は妊婦への使用が禁忌となった。しかし、注射剤は「分娩時の頚管熟化の目的で投与する場合を除く」との但し書きをつけ、妊婦への使用を継続。これは当然注射剤が有効なことが前提だが、国際的な評価は、

 エストロゲン
 頸管熟化のためのエストロゲン投与は、理論的には、子宮の収縮性に何の影響も及ぼさずに頸管を熟化させる。しかし、さまざまなエストロゲン製剤での対照試験では、有益な効果は得られていない
(英国のコクラン共同体によるランダム化対照試験を集成した産科臨床の治療指針である「妊娠・
出産ケアガイド」2版(1995)訳書(医学書院MYW、1997)の「34.分娩誘発の準備」より)

エストリオールの現在の評価として、マイリス注開発との比較試験の結果は、エストリオール群はプラセボ群と差がなく、有効性のない成績であった。 

    (産婦人科の世界 31、779、1979)
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プラステロン硫酸ナトリウム

慣用化学名 Dehydroepiandrosterone sulfate(DHA-S)

副腎から分泌されるステロイド骨格をもつホルモン。妊婦体内で容易にエストロゲンに変換されることから、女性ホルモン剤の範疇に含めて扱っている。

 分娩を準備するため、軟産道の一部である子宮頚管は熟化(軟化し伸展性を増す)・展退・開大する。本剤はこの子宮頚管の熟化促進を目的として開発されている。

構造式

製 品 マイリス (鐘紡、日本オルガノン)
       注 100 mg、200 mg 膣坐剤 600 mg
    アイリストーマー注 (富士製薬工業)      
    レボスパ注 (イセイ、科薬)

効 能 妊娠末期の子宮頚管熟化不全における熟化の促進

用 法 妊娠末期(37-41週)に注射剤;1日1回 100-200 mgを1分以上かけて静注、週2-3回:膣坐剤;1回1個を週2回

 

国際的な評価

1. 欧米では、子宮頚管熟化だけを切り離したものはなく、24時間以内の分娩誘発促進が目標。対象は、妊娠中毒症で胎児の発育遅延が予測される場合や、遅延妊娠、それに子宮頚管の熟化自体の遅れが顕著で分娩に支障をきたす症例など。

2. 熟化剤の投与を行う基準は、妊娠37-42週で、24時間以内に分娩誘発を行う必要があり、かつ頸管成熟度の指標であるBishop数(満点は13点)が3-4点以下の妊婦。このような妊婦の数は当然として限られている。

3. その際の熟化剤としてはプロスタグランジンE2局所剤が使用される。

「確実な根拠がなければ分娩のために人工的な頸管熟化をすべきでない」

    “熟化していない”頸管で、分娩誘発を必要とするときに使われる方法と
しては、頸管を準備状態にするだけでなく、適正な出産時期に健康な新生
児の自然経腟分娩となるような方法を心がけて、しかも母体の不都合や不
快感を極力するなくすべきである。
いろいろな方法の中、今のところ、プロスタグランジンだけがある程度
までは分娩誘発の目的に近づいている。プロスタグランジン使用は、分娩
    誘発の失敗が少なく、遷延分娩を減少させ、しかも、経腟分娩を増す。
に与える影響については、いまだに確実な結論を出す十分なデータはない。

     (イギリスのコクラン共同体による無作為対照試験を集成した産科臨床の治療指針、
邦訳『妊娠・出産ケアガイド 安全で有効な産科管理』医学書院MYW)

4. エストロゲン製剤については、次のように評価されている。

     頸管熟化のためのエストロゲン投与は、理論的には、子宮の収縮性に何
の影響も及ぼさずに頸管を熟化させる。しかも、さまざまなエストロゲン
製剤での対照試験では、有益な効果は得られていない。

                               (同文献より)

本剤の評価

1. 本剤の投与対象は医学的介入の必要のない正常妊婦であり、本剤開発の必要性自体が存在しない。

 マイリス注の添付文書には、本剤の臨床効果について、「妊娠末期子宮頚管熟化不全の妊婦に投与した有効率は86.3%(345例/400例)である」として4つの文献を引用している。しかし、この4文献を読めば以下に見るようにすべて正常妊婦に投与されている。

添付文書
  【臨床成績】妊娠末期子宮頸管熟化不全の妊婦にマイリス注1回100〜200mg、
1〜14回静脈内投与により頸管熟化度の改善を認めた。本罪の有効率は86.3%
(345/400例)であった5〜8)。

  【主要文献】
5) 小林隆ほか:産婦世界 29、467(1977)
6) 立花仁史ほか:産婦世界 29、475(1977)
7) Mochizuki, M. et al.:Acta Obset. gynecol. Scand. 57、397(1978)
8) 中山徹也ほか:産婦世界 29、351(1977)

文献5
1)研究対象

対象は上記11病院に入院、あるいは外来に訪れた妊娠38週以降の正常妊婦615例
  である。このうちDHA-S投与例は332例(初産婦235例、経産婦97例)であり、残
り238例(初産婦175例、経産婦108例)を対象例とした。

文献6
1)対象

対象は東北大学医学部付属病院週産母子部に、分娩を目的として入院した妊娠38例
  以降の125例の妊婦であり、いずれも合併症として心、腎、糖尿病、重症妊娠中毒症
およびその他の異常はなく、またまだ規則的な陣痛の認められない妊婦を用いた。

文献7
  1. Subjects and material
A. Subject.
One hundred thirty two Japanese women of 38th to 42th week of
  gestation, admitted or visited Department of Obsterics and Gynecology of
Kobe University Hospital, comprised the experimental volunteers of this
study. All were explained about this study and consented to the experimental
schedule. The gestational age (Table 1) and Bishop sore (Table 2) are
practically equal between the control group and injected groups on the initial
day of experiment.

文献8
1)研究対象

年齢22〜27歳までの妊婦のうち重症中毒症・糖尿病など重症合併症がなく、かつ
羊水過多症、双胎など異常の認められない初産婦50例、経産婦21例を研究対象とした。
これらのうち初産婦28例、経産婦12例の合計40例にDHA-Sを投与し、初産婦22例、
経産婦9例の合計31例を対象例とした。

本剤の開発を進めたマイリス研究班の論文は、本剤について以下のように明記している。

    薬物的に子宮膣部の軟化を促進し、生理的に存在する子宮収縮物質に対する
子宮筋の感受性を高め、分娩をより安全に終了させることが出来ればとの望み
は大きい。すなわち、分娩に際し、子宮頸を成熟させることおよび子宮筋の
oxytocinに対する感受性を高めることは、分娩の自然の経過をより改善するこ
   とであり、産科学にとってこのような薬剤の開発が待ち望まれてきた。 

 正常妊婦に対しルーチンに使用することをめざした本剤は、現在日本の初産婦の3人に1人、20万人以上に多用されている。

 IMS医療統計(処方箋調査) 
1998年度のマイリス売上高は保険薬価ベース25億円(年間使用量で100mg注10万本、200mg注62万、膣坐剤46万個)。

 

 正常妊婦での子宮頚管熟化の推移

 子宮頚管熟化の尺度としては、ビショップ数が広く使われている。

   Bishop採点法   妊娠末期には子宮頸部が軟化、短縮、開大して
分娩準備を整えるが、このような頸管成熟度の指標
として、Bishopは頸管開大度、展退度、児頭の位置
(先進部の高さ)、頸部の硬さ、子宮口の位置の5因
子についてのscoring(13点満点)を設定した。なお
Bishop scoreが9点以上、梅沢−岩崎法では8点以上
になると分娩発来は数日以内と推定される。

                (日本産科婦人科学会編 産科婦人科用語解説集 第2版)

 妊娠週数でのビショップ数の推移

 
(産婦人科治療1999年増刊「周産期管理の実際」中の望月真人氏(マイリス膣坐剤治験総括医師)論文より)

        
ビショップ数の個々人でのばらつきが大きい。初産婦・経産婦の別なくビショップ数が上昇し始めるのは、平均して(マイリスが投与開始される)妊娠37週以降であり、分娩が近づく時期には薬物投与がなくても一般的に急速に上昇する。

 ビショップ数の週別分布



(同文献より)

 初産婦は、本剤の投与開始時期妊娠37週の時点では、まだ半数が2点以下である。この時期の頚管熟化は何ら必要性がない。

2. 臨床試験での新生児切迫仮死の増加傾向が、動物実験での周産期死亡率の増加とぴったりと合致し、本剤によってかえって周産期障害が増加する危険性がある。

 頚管熟化促進の本来の目的は、周産期障害の予防にある。本剤の臨床試験では、エンドポイントとして「頚管熟化効果」「分娩開始促進効果」「分娩経過への効果」「有効性総合効果」が用いられているが、妥当なものでなく、本来の目的から、国際的に標準的なエンドポイントである「周産期障害の減少」とすべきである。

比較臨床試験成績から、新生児切迫致死率や新生児仮死率は、本剤群がプラセボ群に比し、有意の差はないものの多い傾向が認められる。

 
浜六郎、八重ゆかり:プラステロン硫酸ナトリウム(マイリス)−−その有効性と安全性(危険性)に関する研究 TIP(正しい治療と薬の情報)14, 137 (1999)および15, 11, (2000) 以下同様

 妊娠末期ラットを用いての試験で、膣坐剤の投与(ヒト投与量と同等の10mg/kg)で、周産期死亡率の増加傾向が認められている。




 他にも、器官形成期への腹腔内投与で胎仔死亡率の増加が認められている。なお、この動物実験ではいずれも最大無影響量が求められていない。

3. 非生理的な高濃度の女性ホルモンへの曝露で、長期の悪影響の可能性が高い。

 DHA-Sは注射剤あるいは膣坐剤として投与されると、胎盤で速やかに代謝されて17βエストラジオール(E2)に変化し、胎児にも移行する。この胎児への移行は、本剤の開発を推進した臨床研究者によって明らかにされている(日本産婦人科学会雑誌 34, 1138 (1982))。本剤投与により、母体や胎児も、非生理的高濃度の防御能力を超えたプラステロン流酸ナトリウムや17βエストラジオールに曝露されることになる。

 サリドマイド薬害事件以来、妊娠前期の器官形成期と呼ばれる時期における薬物投与には、慎重な配慮がされるようになるとともに、機能的な影響にも注意が向くようになった。

 内分泌かく乱化学物質で問題となっているのは、女性ホルモン様物質による発達途上の生体の生殖系、免疫系、脳神経系への決定的な不可逆的変化である。

 生殖系では、例えば細精管内で精子の産出を調節するセルトリ細胞は、胎児期から思春期まで増殖を続けているため、妊娠後期投与でも影響が起こりうる。

 また、最近では脳の発達の面で妊娠後期が注目されている。

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