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分野別 提言・アピール・記事

[声明]

大飯原発の即時停止、全原発の速やかな廃止とエネルギー政策の転換を求めます


2012年9月30日 新薬学研究者技術者集団

 2011年3月11日の東日本大震災による東京電力福島第一原発事故は、放射性物質の放出による大規模な被害をもたらしました。事故から1年半を経過しても被災者の救済と被災地の復興は遅れ、国民の多くが放射線被害の不安にさいなまれているなど、まだ「収束」にはほど遠い状況にあります。
 この事故について、今年6月末、国会事故調査委員会の報告書は「福島原発事故の本質は人災である」と結論づけました。事故前の原発に対して津波対策どころか地震対策すら十分になされていなかったこと、事故後の危機が迫るなかでも、情報が隠蔽される一方、虚偽の情報が発信されたり、被曝事故発生時の基本対策であるヨウ素剤の配布が的確に行われなかったことなど、あまりにもずさんな危機管理体制であったことが明らかにされています。
 このような検証がまだ進行の途上であるにもかかわらず、今年6月、政府は関西電力大飯原発の再稼働を強行しました。事故により数多くの被災者と避難者を生み出した原発を、再発防止の有効な対策を立てずに再稼働したのです。これに対し人びとの怒りが新たに沸き起こり、首相官邸前抗議集会を始め、全国各地で脱原発を要求する集会や示威行動が頻繁に行われています。7月16日の東京代々木公園での集会には17万人もの人びとが集まりました。
 大飯原発は、夏場の電力不足を大きな理由として再稼働されましたが、今夏の猛暑にもかかわらず、経産省の推定では全原発停止のままでも電力は足りており、また関電の発表でも最大ピーク時(8月3日)に大飯原発を除いても81万キロワットの余裕があったとのことです。
 地震国日本でまた福島第1原発と同様の事故が起これば、壊滅的な打撃を受けることは明らかです。今回の原子力災害を通じて、原子力発電は人間が制御できない重大な欠陥をもっていることがあらためて確認されました。使用済み核燃料を安全に処理する技術はなく、100万年後までも安全対策が必要とされるようなものを後世に残すことはできません。また原発の使用済み核燃料が核兵器の製造に利用されることを危惧する声もあります。今年の原子力基本法改正によって、同法のいう「安全の確保」の内容に「わが国の安全保障に資する」という文言が加えられたことも看過できません。
 私たちは大飯原発の再稼働をただちに中止し、停止中のすべての原発も再稼働させないことを求めます。そして日本国憲法が謳う生存権の保障とは両立することができない原発を完全に廃止するため、国が一切の原発を稼働させないことを前提とするエネルギー政策への抜本的転換を決断するよう求めます。