薬局におけるOTC薬 (大衆薬を巡る四つの物語2)

アスカ薬局(元日本薬剤師会会長) 佐谷圭一

2 大衆薬は限界を知ることで、活かすことができる

 「ポンポンがイタイ!」と幼い子供が叫ぶ。ある小児科の医師は、こう教えてくれた。「ポンポンがイタイ」は、二次方程式だと。幼児が云う「ポンポン」は、足の先から頭のてっぺんまで体全体のことを指すのだ。

「イタイ」とは、「かゆい」も「痛い」も「気持ちが悪い」がごちゃ混ぜだ。おまけに「お腹が空いた」かもしれないのだ、と。だから(X×Y)という二次方程式だ。これが薬局へくるとやっかいなことになる。「お腹の痛み止め」か、「体のかゆみ止め」か、親の見てないところで転んででの「頭にこぶはない?」などとあれやこれや詮索が大変だ。だが重要なことがいくつかある。

「便はきちんと出ているか?」「肛門に指で触った時、血が出てないか?」「確かに転んだ形跡はないか?」これによって、早急に医師の許にいくかどうかを判断し、必要ならば「受診勧告」を行うのだ。「便が出ていない幼児はむずかる」といわれている。「夜泣きに浣腸」なる言葉がある。これは浣腸一本ですぐ良くなる。

肛門から血液が出ている場合は、これはキケンだ。すぐに救急車だ。腸重責の可能性がある。痛いということは、腸捻転かもしれない。開腹手術だ。頭を打っている場合もそうだ。転んで泣かない子供は怖い。その上、吐いたりしたら脳内出血かもしれない。即刻、救急病院行きだ。

これは、一例だが、薬局薬剤師は的確な判断を求められる。大衆薬の限界を知るのと同時に、薬剤師の限界と薬局の限界を知ることが大切だ。薬剤師でも、抗生物質や睡眠導入剤・精神安定剤などの要処方せん薬は販売できない。

これは薬局の限界でもある。その限界を知ることも、大衆の安全性確保には重要なことだ。病気の勉強もしなければならない。薬局薬剤師を志向するなら、全科にわたる限界とキケンゾーンを把握する必要がある。その限界内でこそ、大衆薬はいきいきと活用されるのだ。