薬局におけるOTC薬 (大衆薬を巡る四つの物語4)

アスカ薬局(元日本薬剤師会会長) 佐谷圭一

4 使用上の注意「医師又は薬剤師に相談してください」

大衆薬の添付文書のほとんどに、このフレーズが入る。これも、前述の委員会での話である。ある時、厚生省(当時)の一般薬の係官が相談にこられた。「大変です。サルファ剤の目薬が大衆薬から消えそうです。なんとか委員会で止めてくれませんか」という。実は大衆薬には抗生物質入りのものは、(現在も)許可はされてない。ものもらいに効くという目薬は、サルファ剤入りの目薬が唯一無二なのだ。

私も困った。委員会に出てみると、目薬の特別委員会ができるからそこに私を親委員会から派遣するというのだ。私が行って話をしてだめなら万事休すだ。委員会としても業界筋に言い訳が立つという段取りだ。仕方なく、その専門委員会に出た。見渡すと、大病院の眼科医の権威が居並んでいる。そこへ薬局のしがない薬剤師が頼りなげに一人はいった。

早速、一般薬のサルファ剤入り目薬の議論に入った。今や、医者はサルファ剤はほとんど使ってない。効かない目薬は止めるべきだと議論が一致した。これも無性に腹がたった。そこで、おずおずと手を挙げて発言をもとめた。「先生方は、効く、効かないで議論されているが、大衆薬唯一のものもらい用の目薬を廃止するなら、抗生物質入りの大衆薬を許可してもらいたい。」 しかし、これは相手にされなかった。もともと親委員会で抗生物質の乱用は抵抗菌を増やすからいかなる大衆薬にも許可しないと決めていたからだ。おまけにダメ押しがあった。

「ものもらいでも死ぬことがある、効かない目薬はキケンです!」云ったのは眼科界の権威だった。私は続けた「眼科は他の科に比べたら我が国では数が少ない。例え効かない目薬でも、2~3日つけて効かなかったら、薬局の薬剤師に相談せよとその目薬の添付文書に書いてある。相談を受けた薬剤師は躊躇なく眼科へかかるように受診勧告するでしょう。もし、このシステムが無かったら、ものもらいの患者は、ざるをかぶったまま先生方の診察を受けずして死ぬかもしれない」 若さが云わせた瀬戸際発言だったが、ここから眼科用剤特別委員会の流れが変わった。結果は、まあ、大衆薬としてあってもよかろうとなった。使用上の注意の中の薬剤師の役割は重要である。

さて、以上の事例から薬学生の方々は、何かを学んだでしょうか。私は、調剤もやる、一般薬も販売する、薬局製剤も作り販売するという薬局の薬剤師に誇りと夢をもっています。